チラシの裏のメモ書き

嘘と本当もあるちゃんと言えないブログ

片想いの終わり その2

 顔色がさえない。中川伊世は、桜井に電話をかけた。離婚の申し出と、高田について、三和に頼みごとをした。10月の土曜日は、晴れていた。
 高田が花屋CULANDOを訪れた。店に高田が入って来た時、「伊世さんの思い出話に、出てきた人だ」と彼女は、思った。顔は見たことはなかった。けれども、中川は彼の雰囲気を、「中性的」と言っていた。確かにそう言われても、おかしくない。
 少し髪を伸ばせば、女性でも行けるかもしれない。そんなことを思いながら、目があった。「こんにちは」と挨拶する。カウンターに彼が寄ってくる気配がする。
「こんにちは。中川さんですか?」
声は、なんだか、どこかで聞いたことがあるような気がした。そう、伊勢田京さんみたいだなと、ふっと思い出す。
「はい。主人から、聞いています。同僚の高田さん?でしょうか。」
中川さんと呼ばれるのが、懐かしいと思う。
「初めまして。高田陽斗です。お世話になります。明野駐屯地で、中川さんと働いています。あれでも、名札……」
怪訝な顔をされる。
「ああ、驚きますよね。結婚前に勤めだしたので、職場では旧姓を使っているんです。初めまして。中川の妻、桜井三和です。今日は、よろしくお願いします」
 挨拶はきちんと出来たと、思う。多分、中川の特別な人なのだろう。互いに、三和と高田は思う。高田は、三和のことを知らなかった。三和は、どこまで知っているのだろうか。なんて話したのだろうか。間があく。少し、互いに探り合うような目になると高田は思う。
「お若いのですね」
高田が驚いたように言う。
「そうですね。5歳ちょっとあの人とは、離れていますので」
 そう言いながら彼女は、手早くカウンターに、花の包み紙を広げる。
 話をしながら、季節の花を選んだ。彼はポツリポツリと独り言のように話した。母が入院していることや、しばらく会ったことがなかったこと。そして、母の入院生活が少し長くなりそうなことだ。高田の話をただ、聞いていた。遮ることはなかった。要所、要所で、うなづいた。三和は、中川の好きな人はこの人かもしれないと思った。この人なら、彼を幸せに出来る。そんな、全然関係のないことを考えていた。

「ありがとうございます。行ってきます」
「ありがとうございました。お気をつけて。」
高田は花屋を出た。桜井三和は、表情が少し自信がなさげな人だった。けれども、花について語る時の彼女はとても、生き生きとしていた。
 高田は意をけっして、病院に向かった。彼の母は、病院の閉鎖病棟で入院している。花を見るのが好きな母のために、陽斗は、花を選んだ。
 何年かぶりに会う。