チラシの裏のメモ書き

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北村薫(著)スキップ

今週のお題「読書の秋」

秋と言えば読書だ。しかし、読書は学生時代には、夏のものだった。特に読書感想文が辛かった。

今から感想を書く北村薫さんの「スキップ」という本は、中学生の頃に読書感想文集で出会った。その時から私を魅了し続けた一冊である。読む年代ごとに、感想が変わる、不思議な本だ。

『スキップ』北村 薫(著) 
ネタバレ。
一ノ瀬真理子(イチノセ マリコ)、17才の高校2年生の秋の学園祭から始まる。学園祭の最終日を迎えることもなく、眠りから覚めれば、そこは25年後の世界だった。25年後の世界では、彼女には桜木氏という同じ国語担当のご主人と、17才の娘美也子さんが居る。

まず、時の残酷さだったり、気づいた点。
意識だけの時間のスキップの残酷さは、主人公の一ノ瀬真理子だけでなく、25年後の家族、桜木真理子の夫や娘の心にも広がっている。

17才の頑固で潔癖な少女から見た視点で物事が進み、随分と悲観的だったり、生きていくために歩いていこうと、苦しさを飲み込む。また、少し周りへの例えば、夫や娘や未来世界への視点が厳しい。

だが、もう会えない過去を忘れた母や、妻と、現在、向き合わなければならない、夫や娘、美也子さんの心情はいかがなものだろうか。

自分を受け止めようとしている主人公、記憶のない意識だけは若い、現在の妻のありのままを受け入れ、そして、妻を導こうとする桜木氏、反発していたが気づけば母をなくして、いとおしさに気づく美也子さんは、強い。

主人公は精一杯だが、周りに恵まれていると思う。
泣きたいのは、真理子さんだけではない、と、読み返して思った。


次に読書感想文を書くことと、人の認知について、のべた文について。

新潮社の文庫本では、p277~282まで記述が続く。
美也子さんの読書感想文の書き出しは、『わたしは100人の男と寝たい』だった。真理子さんは、最初は「無節操な書き出し」で、「通す方も通す方だ」と思った。
私も、ちょっとビックリした。小説には内容が書いていないので、どんなものかは、想像するしかない。
しかし、美也子さんは、彼女にこう反論する。「形だけのごく一部を見て、曲解して、形全体に心を見ないことはいけないと思う」と。
真理子さんが聞けば、美也子さんの作文は坂口先生(国語担当)より「語りたいものを確実に持った文章だ」と評価された。美也子さんの言い分は、こうだ。
『読書感想文なんかは要するに、書けって言われたら、文章をでっちあげられるかどうかを試しているわけでしょ。大人の理想論からすれば、書きたくなる本が出てくるまで、百冊でも二百冊でも、読み、次に進めばいい。』けれど
『宿題には期限がある。それは合う相手を見つかるまでお見合いをするようなもの』
『今回はお付き合い出来る相手が居た。書きたいことがあって、書けるように書いたのは気持ちがよかった』
最初は、無節操な書き出しだと思ってみていた、真理子さんは、美也子さんの気持ちを聞き、納得した。

いきなりだが、学生時代、読書感想文で悩んでいたので、書きたいものがないと、辛いという捉え方には納得出来るものがあった。
本を読んで、感想を書くというのは、とらえどころのないフワフワした思考を言語化するのだ。なんて、力の居ることだろうか。
でっち上げができるくらい、言葉や伝えたいことの引き出しを持つのも大人だろうか。