頼った異性

 三和は、伊勢田京に、フラれてから、気づくと涙が出てきた。三和は自分自身か価値のない、ただのカエルだと思うようにもなっていた。しかし、自己陶酔に浸れるのだから、フラれるのは楽かもしれないと、三和は思うのだ。
 フラれてから、伊勢田に使っていた時間を、桜井三和は自分自身のために使うようになった。家族をも省みず、ボランティアや、仕事に熱中した。京を見返そうとかではなくて、ただ悔しかった。そして、自分が信じられなかったのだ。人との約束も、出来る限り、守ろうとした。家で同居していた祖母が危篤になった時も、彼女は仕事をしていた。祖母は一度、黄泉の池に足を入れてしまったのではないかと三和は思う。
 治療で回復したものの、回復した祖母は、以前の祖母ではなかった。寝たきりとなり、家で暮らすのが難しくなった。病院や老人ホームを転々とした。転々とする中で、祖母は生きることをやめていった。三和は、そんな祖母に会いに行くのがだんだん、辛くなってきた。仕事を理由に、ほぼ家をあけていた。死期がちかづいた時も、自分が悲しくなるからという理由でおちおち見舞いにもいかなかった。知らせは突然だった。祖母は、亡くなった。
 三和は、自分自身を持て余していた。結局、誰かにわかって欲しかったのだろう。三和には、親しい人が数名ほど居た。

 ボランティアで出会った33歳の、星羽さんには、勉強を教わっていた。お礼にと、数回食事に誘った。星羽さんは、東北の大学出身でインターネット関係の企業に勤めているようだった。詳しくは三和はよく知らなかった。だんだん、星羽さんも忙しくなってきたのか、それとなく、『会いたいです』と言うと、メールすら帰ってこなくなった。音信不通になった星羽さんのSNSを、ちょこちょこと、三和は見ていた。新しい職場に転職した情報は、本人から聞いていた。互いの転職を祝って、食事にも行ったくらいだ。そして、音信不通となった頃に、SNSに『結婚した』という表示が出た。内心『うわわ』と思った。これは、三和の告白する前の失恋だった。告白すらさせてくれなかった星羽さんは、さすがだと思った。
 他にも、ハグを許した40代独身のパパさんが居た。一人暮らしを始めて、中川さんと付き合うと言ったら、怒りだしたので、会うのは止めた。
 三和は、フラれた後に学校に通っていた時期がある。その時に、一人の男の子と親しくなった。ある時、あんまりに普通に出来ない時があった。普段は、男の子の話を聞くばかりだった。その時に、チラッと恋愛関係の、たわいのない話をした。男の子には、そういう話はしたことはなかった。三和には珍しく、相手をそういう目でも見たことがなかった。それが、なんだか、おかしなことになった。『辛い』と伝えた後に、男の子から告白された。意外な展開だった。ハートに矢が刺さった。それは喜びであり、悲しさだった。真剣だからこそ、断るときに、辛かった。三和は思った。恋愛の話は異性にするのはやめよう。同性の友人が欲しいと思った。三和とその彼とは、最近は、あまり連絡をとっていない。
 他にも、頼った相手が居る。アル中の梅さんという人だった。50代の男性だ。ボランティア仲間で、ボランティア関係の気になることをちょくちょく連絡していた。ある日は、メッセージですませたい内容だったから、メッセージにした。そうしたら、電話をかけてきた。梅さんとも、夜に電話をする仲だった。 梅さんは切り口が鋭い言葉を使う。彼の持論ではそうすると、『回復する』と言うのだった。梅さんは、恋愛感情はない。ただの酔っぱらいで叱ってくれるおじさんだった。
 最近は、中川という恋人が出来たので電話もかけなくなっていた。