片思い-悪い魔女の呪い〈2〉

 三和は、伊勢田京に、フラれてから、気づくと涙が出てきた。三和は自分自身か価値のない、ただのカエルだと思うようにもなっていた。しかし、自己陶酔に浸れるのだから、フラれるのは楽かもしれないと、三和は紫舟さんと出会ってから思うのだ。
 フラれてから、伊勢田に使っていた時間を、桜井三和は自分自身のために使うようになった。家族をも省みず、ボランティアや、仕事に熱中した。京を見返そうとかではなくて、ただ悔しかった。そして、自分が信じられなかったのだ。人との約束も、出来る限り、守ろうとした。家で同居していた祖母が危篤になった時も、彼女は仕事をしていた。祖母は一度、黄泉の池に足を入れてしまったのではないかと三和は思う。
 治療で回復したものの、回復した祖母は、以前の祖母ではなかった。寝たきりとなり、家で暮らすのが難しくなった。病院や老人ホームを転々とした。転々とする中で、祖母は生きることをやめていった。三和は、そんな祖母に会いに行くのがだんだん、辛くなってきた。仕事を理由に、ほぼ家をあけていた。死期がちかづいた時も、自分が悲しくなるからという理由でおちおち見舞いにもいかなかった。知らせは突然だった。祖母は、亡くなった。
 三和は、自分自身を持て余していた。彼女は、絶対電話するもんかと決めてたけれども、そんな決意はすぐにつぶれた。
 三和は結局、誰かにわかって欲しかったのだろう。三和には、親しい人が数名ほど居た。
 ボランティアで出会った33歳の、伊賀さんには、勉強を教わっていた。お礼にと、数回食事に誘った。伊賀さんは、高収入な企業に勤めているようだが、詳しくは三和はよく知らなかった。だんだん、伊賀さんも忙しくなってきたのか、それとなく、『会いたいです』と言うと、メールすら帰ってこなくなった。音信不通になった伊賀さんのSNSを、ちょこちょこと、三和は見ていた。新しい職場に転職した情報は、本人から聞いていた。互いの転職を祝って、食事にも行ったくらいだ。そして、音信不通になった。紫舟さんと三和が知り合った頃に、SNSに『結婚した』という表示が出た。それとなく、好きになった異性なので、しっかり、チェックを三和はしていた。内心『うわわ』と思った。これは、三和の告白する前の失恋だった。告白すらさせてくれなかった伊賀さんは、さすがだ。
 二人目の男性、三和はカッパさん(2X歳)と呼んでいた。カッパさんは、三和と年齢が近かった。同い年だが、学年は一つ下だった。カッパが好きで、常にどこかしらに、カッパをつけていた。カッパさんは、どちらかというと三和のタイプではなかった。顔が可愛らしくて、民話が好きで、女子の友だちが多かったのだ。しかし、三和はタイプではないのにも関わらず、カッパさんに話を聞いた。女子の一人として、いた。好きでもないのに、『好みなの』と言ってみた。少し遊びを重ねてみた。だが、むなしくなるばかりだった。カッパさんには申し訳ないが、途中で、ボランティア以外で会うのはやめた。カッパさんのような男性はもう一人居て、今も繋がっている。桜井三和は、恋愛依存体質らしい。他にも、ハグを許した40代独身のパパさんが居た。一人暮らしを始めて、紫舟さんと付き合うと言ったら、怒りだしたので、会うのは止めた。
 三和の人漁りは止まらない。職場でも、先輩(23歳)に色目を使っていた。相思相愛だと、三和は思っていた。けれども、付きあえないとはっきりとその女性には言われた。泣いてすがってみたが、ダメだった。びくともしない。その女の先輩曰く『好きだが、付き合えない。なぜなら、自分は一人で食べていけると思えるまでは、誰とも付き合えない。そうしないと、幸せには相手を出来ないから。決めたことだから』と、伝えられた。
 三和は、フラれた後に学校に通っていた時期がある。その時に、一人の男の子(23歳)と親しくなった。ある時、あんまりに普通に出来ない時があった。普段は、男の子の話を聞くばかりだった。その時に、チラッと恋愛関係の、たわいのない話をした。男の子には、そういう話はしたことはなかった。三和には珍しく、相手を落とそうという考えもなかった。そういう目でも見たこともなかった。それが、なんだか、おかしなことになった。『辛い』と伝えた後に、男の子から告白された。
 三和は、中川に後に以下のように語る。
 『学校に行ってた時に親しい男の子が居た。二年間、親しくしていた。突然に告白された。その時になんか、ハートにズキューンと矢が刺さった。痛かった。久しぶりに、告白されるって、こういう痛みがあるんやと、思った。その子には悪いけど、断った。彼をそういう目で見れない。なにより、多分、彼の前ではサービス精神旺盛に頑張ってしまっている自分に気づいたからなの』と。
 中川は『男の子は、気づいていたのじゃない。』と聞いた。
三和は『男の子は気づいてたか、気づいてなかったか、知らない。そういうのは、ずっとやっていくのは、疲れるなと思った。断るときに、ハートがズキズキ痛かった。男の子が真剣に告白したからこそ、ハートにズキューンと来たのやと思う。それに応えて、断るのはほんまに疲れる。自分が疲れる相手はやめた方がええなと気づかさせてもらった。自分がそういう話をしなかったら、普通に友だちをやれてたんかなとか思うと、寂しくなった』と語り続けた。
 三和とその彼とは、最近は、あまり連絡をとっていない。
 他にも、頼った相手が居る。アル中の梅さんという人だった。50代の男性だ。ボランティア仲間で、ボランティア関係の気になることをちょくちょく連絡していた。ある日は、メッセージですませたい内容だったから、メッセージにした。そうしたら、電話をかけてきた。梅さんとも、夜に電話をする仲だった。 梅さんは切り口が鋭い言葉を使う。彼の持論ではそうすると、『回復する』と言うのだった。梅さんは、恋愛感情はない。ただの酔っぱらいで叱ってくれるおじさんだった。
 最近は、紫舟さんや中川という二人が出来たので電話もかけなくなっていた。