片想い-盗み聞き(ボーイズラブな文)

『中川君には、恋人とか居ないの?』
それを中川に聞くのか、高田。
内心、突っ込みを入れてしまったが、声にはださない。身動きもとらない。
このシチュエーションは小説に使える、きっと、短い話が出来るという思いからだ。今まで、宿直室に入ってから、頑張っていた。
慣れないスマホでいかにも音楽を聞きながら寝ているふりをしていた。
神戸イガミ、若干30歳。
久居駐屯地の女性隊員からは、体格の割りに力があること、見た目が爽やかイケメンであることでギャップで人気だ。
本人は、そういうことに敏く、機敏に動き回る。しかし、女性を寄せ付けないように動いている。 
イガミは、ある日、同僚の中川がゲイらしいと気づいた。特に高田のことを追いかけているようだ。

神戸は思う。俺は、ゲイではない。人間観察が好きなのだ。そして、少しばかり、嘘と現実を混ぜた話を作るのも好きなのだ。自衛官の休暇を使い、インターネットのブログに小説もどきを書いている。
女を装って、ボーイズラブという分野の小説を書いている。なんとなく、男であることは、この世界ではあまり、受け入れられない。
男たるもの、こうあらねばがまだまかり通っている。
男が男同士の恋愛を扱うということも、少し、違和感を受ける。嗄れも自身がそういう妄想の対象にはされたくない。
だが、人の様子を見るのは好きで、ついつい、様子を伺ってしまう。
中川にはドSだとか、ガチムチ系が好きだとか思われているようだが、そうではない。そういう登場人物たちが神戸の脳内に居ているのだ。たまに、こいつらは、勝手に暴れだす。
中川は誤解している。
出ていくのを間をうかがっていたわけではない。中川の高田に言いたいのに言えない言葉の想像が容易についてしまい、むなしくなっていたのだ。
高田は、全く気づいている様子がない。
だが、もし、好きな奴が同性愛というものをまったく知らず、受け入れるとかいうまえに、存在を無視している点で始まらない。
なぜそんなにも中川が高田に執着するのかはわからない。だから、本当は応援したい。だが、俺がゲイではないと知った時、ただのボーイズラブという分野が好きな男だと知った時、中川はどう思うだろうか。
ゲイと、ボーイズラブは似ているようで違う。生身の同性に対して、同性の人間が恋をするのと、ボーイズラブは異なる。

妄想のなかでは、ちょっとしたことで恋に落ち、ハプニングかあり、別れるか、別れないかという瀬戸際にいたりする。現実では、そうそううまくは行かない。物語の終わった時点から、またお話が続いているのだ。 相手の理解を得るためには……と、神戸は考えていた。

神戸が耳をすませていると、その声が聞こえた。要約すると高田は、こう言いたいらしい。
『ギャップ萌えだよね。見た目は悪だけど、中身が優しいみたいな。そこに女子は、好意を持つ。あと、面倒見がよい。』
なるほど、高田はだてに中川とくつっいていない。しっかり、良さをわかっている。そして、高田の言葉は続く。
『だから、君が好き』
爆弾が落ちたような気がする。お前は、何を言ってるんだ高田。